受託開発会社の成長戦略~直案件獲得が不可欠な3つの理由~

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はじめに

受託開発業界の現状と直案件を獲得していく必要性

システム開発業界において、直案件の獲得は多くの開発会社が目指す重要な経営課題の一つです。受託開発会社の中には、直案件の割合を増やすことで、より安定した経営基盤を築いている企業も増加しています

その背景には、DXの加速による開発ニーズの増加と、従来の多重下請け構造からの脱却を目指す業界全体の動きがあります。企業のデジタル化への取り組みが本格化する中、開発会社には高い技術力とともに、クライアントのビジネス課題を深く理解し、最適なソリューションを提案できる力が求められています。

直案件では、クライアントとの直接的な関係構築により、より効果的な提案と柔軟な開発が可能になります。しかし同時に、契約交渉やプロジェクト管理、リスク管理など、これまで元請け会社が担っていた役割も自社で担う必要があります。本稿では、直案件獲得の意義とリスク、そしてそれらに対応するための具体的な戦略について解説していきます。

1.直案件獲得が不可欠な3つの理由

1.1 利益率アップと安定経営の実現

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システム開発業界において、直案件の獲得は収益構造を大きく改善する可能性を秘めています。下請け構造では複数の会社を経由することでマージンが重なり、利益が圧迫されがちです。しかし直案件では、顧客と直接取引を行うことで適切な利益を確保でき、自社の成長に必要な投資も可能になります

直案件による収益面のメリット

・中間マージンの排除による利益率の向上 ・保守運用や機能追加による継続的な収益の確保 ・顧客との直接取引による価格交渉の柔軟性 ・予算管理の透明性向上による採算性の把握

以上のようなメリットがある一方で、直案件による利益率向上を実現するためには、適切な体制づくりが重要です。具体的には、正確な工数見積もりのスキル、予算管理の仕組み、そして品質管理体制の整備が必要です。これらの体制が整っていない状態で直案件を受注すると、かえって収益を圧迫するリスクもあります。

多くの開発会社では、既存の下請け案件を維持しながら、徐々に直案件の比率を高めることで、段階的に収益基盤の安定化を図っています。この段階的なアプローチにより、リスクを最小限に抑えながら、着実な成長を実現することができます。

Point

・中間マージンの排除により、適切な利益率の確保が可能

・顧客との直接的なコミュニケーションで、プロジェクトの透明性が向上

・安定した収益による技術投資・人材育成の実現

Tips

・案件の見積もり時には、将来の機能拡張や保守運用までを見据えた価格設定を心がける ・定期的な進捗報告会を設定し、早期の課題発見と対応を可能にする ・開発プロセスの可視化とドキュメント化を徹底し、属人化を防ぐ

1.2 直取引が競争力と優良な継続案件獲得へ導く

直案件における顧客との信頼関係構築は、持続的な事業成長の基盤となります。下請け構造では元請け会社を介するため、エンドユーザーのニーズや課題を直接理解する機会が限られるケースが多い状態でした。しかし直案件は、企画段階から顧客と直接コミュニケーションを取ることで、より深い課題理解と効果的な解決策の提案が可能になります。

顧客と直接取引することで得られる強み

・エンドユーザーのニーズを直接把握できる環境 ・長期的な取引関係による案件の安定化 ・顧客の信頼獲得による新規紹介の増加

信頼関係の構築は、単なる開発パートナーからビジネスパートナーへの進化を促します。顧客の業務プロセスや課題を深く理解することで、システム開発にとどまらない価値提供が可能となり、長期的な取引関係の構築につながります。また、成功事例の蓄積は、同業他社への紹介案件獲得にも発展し、新たな事業機会を生み出します

また、特定の業界に特化した開発を行っている場合、その業界特有の課題解決ノウハウが蓄積され、より効果的な提案が可能になります。このような好循環により、新規の直案件獲得がさらに加速するでしょう。

こうした取り組みの結果、既存顧客からの継続的な案件獲得だけでなく、その顧客からの紹介による新規案件の獲得にもつながっています。特に中小企業では口コミによる案件獲得が重要な成長要因となっており、一つの信頼関係が次の事業機会を生む好循環を生み出しています。

Point

・直接的なコミュニケーションによる深い顧客理解の実現

・継続的な案件獲得につながる信頼関係の構築

・紹介案件による新規顧客開拓の促進

Tips

・定期的な進捗報告と課題共有の機会を設ける ・顧客の業界や業務に関する知識を継続的に蓄積する ・提案時は具体的な数値や事例を用いて価値を説明する

1.3 専門性の発揮が市場価値を向上させる

直案件の獲得は自社の強みを最大限に活かせる機会となります。例えば、自社で実績の多い業界の知識と技術力を組み合わせることで、顧客の課題に対してより本質的な解決策を提案することが可能になります。実際に、製造業向けの生産管理システムや、金融機関向けのリスク管理システムなど、業界特化型の開発で成功を収めている企業も増えています。

専門分野に特化する事で、以下のような価値提供が可能になります。

・業界特有の課題に対する最適な技術選定 ・過去の実績を活かした効率的な開発手法の提案 ・運用フェーズまでを見据えた設計・実装 ・類似案件での知見を活かした改善提案

専門性を高めることは、自社の市場価値向上にもつながります。価格競争から脱却し、より高度な課題解決パートナーとしてのポジションを確立できれば、結果として案件単価の向上や、より大規模な直案件の獲得にもつながっていきます。実際に、ある業界で成功事例を作ることができれば、同業他社からの引き合いも増え、業界内での認知度向上という好循環も生まれます

専門性の向上は、社内の人材育成にもプラスの影響をもたらします。特定分野に特化することで、技術者のスキルアップの方向性が明確になり、より効果的な育成が可能になります。 専門性を持つことで、社員のモチベーション向上にもつながり、優秀な人材の定着率向上にも寄与します。

Point

・専門性の発揮による価格競争からの脱却

・業界・技術の専門知識を活かした提案力の向上

・高度な課題解決パートナーとしての地位確立

Tips

・特定業界・技術分野への集中的な投資 ・成功事例の分析と知見の体系化 ・専門性を活かした提案資料の整備

2.開発業界で考えるべき市場変化

2.1 開発ニーズの多様化と専門性の重要性増大

DXの加速により、企業のシステム開発ニーズは急速に多様化しています。従来の基幹システムの刷新だけでなく、AIやIoTの活用、クラウドネイティブな開発、アプリの需要拡大など、技術要件は複雑化の一途を辿っています。この変化に伴い、開発会社には特定分野での専門性と、最新技術への対応力が強く求められるようになってきました

特に、特定の業界や技術分野に特化することで、独自のポジションを確立している企業が増えています。例えば、製造業向けのIoTソリューションに特化した開発や、金融機関向けのセキュリティ強化された基幹システムの開発など、専門性を活かした案件獲得が活発化しています。

市場では以下のような開発ニーズの変化が見られ、それぞれに対応できる専門性が求められています。

・業界特化型のソリューション提供 ・クラウドネイティブ開発への移行 ・AIやIoTなど先端技術の実装 ・セキュリティ対策の高度化

さらに、エンドユーザー企業のIT人材不足も、開発会社にとって追い風となっています。社内でDX推進や管理を担える人材が不足している企業では、技術的な知見と実績を持つ開発会社との直接取引を求めるケースが増加しています。この傾向は、特に中堅・中小企業において顕著であり、包括的なIT支援を求めるニーズも高まっています。 専門性の高い開発会社は、単なる開発パートナーではなく、顧客のDX推進における戦略的パートナーとしての役割を期待されています。この役割を果たすためには、技術力の向上はもちろん、業界知識の蓄積や、ビジネス課題を理解する力も重要となってきています。

Point

・DXの加速による開発ニーズの多様化と高度化

・特定分野での専門性確立の重要性

・エンドユーザー企業のIT人材不足による直接取引の増加

Tips

・自社の強みとなる技術領域の明確化 ・継続的な技術研修と資格取得の推進 ・特定業界での実績づくりと知見の蓄積

2.2 発注形態の変化と直接取引の増加

日本のシステム開発業界では、大手SIerを頂点とした多重下請け構造が長年にわたり確立されており、いまだにこの構造が主流となっています。特に大規模な基幹システムの開発では、プロジェクトの規模やリスク管理の観点から、この従来型の受発注構造が一般的といえるでしょう。

しかし一方で、中小規模の開発案件では、新しい取引形態も現れています。具体的には以下のような場面で、エンドユーザー企業と開発会社の直接取引が増加しています。

・既存システムの保守・運用案件 ・部門特化型の業務システム開発 ・Webサイトやスマートフォンアプリの開発 ・社内向け業務効率化システムの開発

特に注目すべき点は、特定業界や技術分野に特化した開発会社の動きです。例えば、製造業の生産管理や小売業の在庫管理など、業務知識と技術力を組み合わせた専門性を持つ企業では、その専門性を活かして直接取引を実現しているケースも出てきています。

ただし、元請けとの協力関係も経営安定のために極めて重要な部分です。直取引への移行は、既存の取引関係を維持しながら、段階的に直案件を検討していく必要があるでしょう

Point

・大規模開発では従来型の多重下請け構造が主流

・中小規模案件や特定分野で直接取引の可能性

・段階的なアプローチの重要性

3.直案件獲得に伴う課題と対策

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3.1 リスク管理と契約交渉スキルの強化

「契約書の内容確認が不十分だったため、追加開発の費用請求ができなかった」「曖昧な要件定義により、想定以上の工数が発生し赤字案件となった」――。直案件獲得を目指す開発会社が直面するこうしたトラブルは、決して珍しいことではありません。実際に、初めて直案件を受注した企業の多くが、契約交渉やリスク管理の経験不足から様々な課題に直面しています。

契約交渉の現場では以下のようなリスクが潜んでいます。

・要件定義の範囲設定 ・追加開発時の費用算定方法 ・瑕疵担保責任の範囲 ・知的財産権の帰属 ・情報セキュリティ対策の責任範囲

これらのリスクに対応するためには、法務面での知識強化はもちろんのこと、PM視点からも適切な管理体制の構築が必要です。特に重要なのは、開発プロセスの各段階でのリスク管理です。要件定義から保守運用まで、各フェーズで起こりうるリスクを予測し、契約書や議事録などの文書で明確に合意を取ることが重要になってきます。 例えば、要件定義段階では、以下のような具体的な対応が効果的です。

・顧客との認識齟齬を防ぐための要件定義書の作成と合意 ・開発スコープの明確な定義と文書化 ・追加要件が発生した場合の対応プロセスの事前定義 ・マイルストーンごとの成果物の具体的な定義

成功している開発会社では、実際のトラブル事例をナレッジとして蓄積し、契約書のテンプレート化や社内チェックリストの整備を進めています。また、顧問弁護士との連携体制を構築し、重要案件については契約書の事前チェックを行うなど、重層的なリスク管理を実施しています。

Point

・契約面での明確な合意形成の重要性 ・各開発フェーズでのリスク管理の必要性 ・組織的な知見の蓄積と活用

Tips

・過去のトラブル事例の分析と共有 ・契約書レビューの体制構築 ・プロジェクト記録の徹底した管理

3.2 人材育成と組織体制の整備

直案件の獲得・遂行において、最も重要な要素の一つが人材育成です。従来の下請け構造では、上流工程を元請けが担当することが多く、開発会社側は実装に特化したスキルが中心でした。しかし、直案件では要件定義から運用保守まで、プロジェクト全体を担う必要があります

直案件の成否を左右する重要なスキル

・業務分析と要件定義 ・プロジェクトマネジメント ・コミュニケーション能力 ・品質管理と工程管理 ・コスト管理

多くの開発会社では、まずPMの育成から着手しています。具体的には、経験豊富な技術者を少人数のチームリーダーとして起用し、小規模案件から実践的にマネジメントスキルを磨いていく方法が効果的です。 さらに、組織としての対応力を高めるため、以下のような取り組みも重要です。

・開発標準の整備と共有 ・ナレッジ管理の仕組み作り ・レビュー体制の確立 ・技術研修の定期的な実施

一方で、すべてのエンジニアを上流工程対応可能な人材に育成する必要はありません。むしろ、各メンバーの適性や志向性を見極め、それぞれの強みを活かせる役割分担を明確にすることが、組織全体としての対応力を高めることにつながります

Point

・プロジェクト全体を担える人材の計画的な育成

・組織としての標準化とナレッジ共有

・メンバーの適性を活かした役割分担

Tips

・小規模案件での実践的なOJT ・定期的な技術共有会の実施 ・外部研修の戦略的な活用

3.3 新技術への対応と継続的な学習

「技術の選定を誤り、プロジェクトが頓挫した」「新しい開発手法に対応できず、案件を逃した」――。IT業界の技術革新の速さは、時として開発会社の大きな課題となります

では、開発現場で求められる新技術とは何でしょうか。クラウドネイティブな開発環境、コンテナ技術、マイクロサービスアーキテクチャなど、システム基盤に関する技術から、AIやブロックチェーンといった先端技術まで、その範囲は広がる一方です。しかし、すべての新技術に対応することは現実的ではありません。 重要なのは、自社の強みと市場ニーズを見極めた上で、戦略的に技術投資を行うことです。例えば、製造業向けのシステム開発を得意とする会社であれば、IoTやデータ分析関連の技術に注力する、といった具合です。実際に、特定の技術分野に特化することで、継続的な案件獲得に成功している開発会社も増えています。 技術力向上のための具体的な取り組み例:

・技術検証用の環境整備 ・社内勉強会の定期開催 ・パートナー企業との技術交流

新技術への投資は、必ずしも大規模である必要はありません。小規模な検証プロジェクトから始めて、段階的に適用範囲を広げていく方法も効果的です。また、特定の技術については外部パートナーとの協業を検討するなど、柔軟な対応も選択肢となります。

Point

・自社の強みを活かせる技術分野への戦略的投資

・段階的な技術導入と実践的な検証

・社内外のナレッジ共有体制の構築

Tips

・PoC(概念実証)プロジェクトの積極的な実施 ・オープンソースコミュニティへの参加 ・技術ブログなどでの情報発信

まとめ:直案件獲得による持続的な成長の実現

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本稿では、開発会社にとっての直案件獲得の重要性と、その実現に向けた具体的な取り組みについて解説してきました。直案件による利益率の向上や、顧客との信頼関係構築は、開発会社の持続的な成長に大きく寄与します。一方で、市場の変化や新技術への対応、リスク管理など、克服すべき課題も少なくありません。 これらの課題に対しては、段階的なアプローチが有効です。例えば、既存の下請け案件を維持しながら、徐々に直案件の比率を高めていく方法や、小規模な案件から始めて実績を積み重ねていく方法などが考えられます。重要なのは、自社の強みを見極め、それを活かせる分野で着実に実績を作っていくことです。 新規の直案件獲得に向けて、まずは以下の項目から取り組んでみましょう:

自社の強みとなる専門分野の明確化 提案力・プロジェクト管理力の強化 実績を活かした段階的な営業展開


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